潰瘍性大腸炎とは
原因不明の大腸に慢性的な炎症をきたす病気です。大腸にびらん、 潰瘍 、 出血といった所見を認め、下痢、血便、腹痛、発熱などの症状が見られます。厚生労働省が難病指定している病気のひとつです。比較的若い人が発症し、30歳代にピークがありますが、最近は高齢になってから発症するケースにも増加してきています。よってどの年代でも潰瘍性大腸炎を発症し得るのです。男女差はありません。1990年には約2万人だった患者数は増え続け、2021年現在では約22万人が罹患されていると言われ、今後も増加が予想されています。潰瘍性大腸炎は今のところ完治しない病気ですが、適切な治療が行われれば多くの患者様が「寛解(かんかい)」状態、つまり症状が抑えられた状態に回復します。最近では治療効果の高い新たな治療法も開発されており、 多くの患者様が寛解状態を維持されており、健康な方と同じような生活を送ることができます。ただし、適切な維持治療が行われないと、再び「再燃」という症状が悪化した状態に戻ることがしばしばあります。「寛解」と「再燃」を繰り返し、大腸の炎症が長期にわたり持続するのが潰瘍性大腸炎の特徴なのです。また、発病から7〜8年が経過すると、大腸癌の発生のリスクが出てくることが知られています。よって、潰瘍性大腸炎の患者様は定期的な消化器内科でフォローしていくことが必須となります。いかに「寛解」状態を持続させるかが、最も重要な治療のポイントです。当クリニックでは潰瘍性大腸炎の治療を積極的に行っていますのでぜひご相談ください 。
症状
持続する血便(粘血便でレンガ色のねっとりとした出血)、下痢、腹痛があり、症状がでている活動期(再燃期)と症状が治まる寛解期を繰り返して進行するため、いったん症状が治まったからといって、放置していると症状を悪化させてしまうことがあります。炎症が進行して重症になると、発熱、体重減少、貧血、穿孔(腸に穴があく)を起こすこともあります。また長期間の罹患で大腸がんの発症リスクが上昇してしまいます。症状がある活動期には炎症を鎮める治療を行い、症状が治まった寛解期にはその状態をできるだけ長く保つための治療を続けます。また、定期的に内視鏡検査を受けて粘膜の状態や病変の範囲を把握して適切な治療に役立てることも重要です。内視鏡検査は大腸がんの早期発見にも不可欠です。当院では、消化器専門医 、内科認定医、内視鏡専門医の資格を持つ医師が安全で丁寧な検査と病気の確定診断を行っています。安心していらしてください。
原因
遺伝・食物・腸内細菌叢、環境要因(化学物質など)、免疫などが複雑に関与していると考えられていますが、はっきりとした原因はまだ解明されていません。発症メカニズムが解明されていないので完治に導く治療法はありませんが、炎症を鎮めて、症状をしっかりとコントロールすることで良い状態を保つことができます。
合併症
重症化すると炎症が広範囲になって消化に大きな悪影響を及ぼします。また、炎症が腸壁深く進行すると孔があいて、大量出血や腹膜炎を起こす可能性があります。閉塞やガスで腸が膨張して中毒症状につながる巨大結腸症を起こすこともあります。こうした合併症は命の危険もあるため、緊急手術が必要になる場合もあります。
治療
活動期には炎症を鎮める治療を行います。症状が治まっている寛解期にも良好な状態をキープするための治療を続けることで、症状をしっかりコントロールしていきます。強い症状が現れている場合には入院が必要です。基本的に5-ASA製剤を使った治療を行いますが、炎症が強い場合にはステロイドなどでできるだけ早く炎症を鎮めます。難治例には免疫調節剤、生物学的製剤などを使った治療を行うこともあります。当院では最新の薬剤療法も可能となっております。ぜひご相談ください。